「あの…音村係長は、
なぜ、ここに居ないのですか?」


神島が尋ねる。


「ああ。音村は、トイレに
引き込もってるんぢゃね?」


そういって困り顔で
神島に返事をした佐藤係長は
ポロッと、本音を漏らす。

「今日、向こうの役員が来てね。
俺たち、さっき迄呼ばれてただろ。
出向人数の最終調整してたんだ。

音村は、3人共行かせたいって
譲らなかったんだ。

派手に、やりあってたけど
残念ながら、通らなかった。」



ああ…コイツだ…と、いって、
佐藤係長が卓上に滑らせた名刺は




“YAMAZAKI RIHITO”


ーーー山崎理人ーーー




「会長の前妻との間の
息子だったとは、な…。

うちも、経費なんかの関係で
2名で手を打つしかなかった。
すまない。」



そんな係長の言葉も、もう…
俺の中には届かなかった。