「お前ら、こっち、こっち。」
ホールの扉を少しあけて
エセ弁護士が顔を覗かせる。
俺たちを入れて扉を閉めた彼は
ニンマリ笑みを浮かべた。
「最後まで見てくれて
ありがとな。」
あの状態が小一時間続くから、
楽屋にいればいいと、
弁護士はいう。
「で、打ち上げ一緒に行かねぇ?
アスリートは、酒飲まないか?」
そういった弁護士に
「あ、いや…俺たちは…」
神島が言葉を選びながら口を開く。
“遠慮します”…ってな語尾が
見えた瞬間
「折角なので、お邪魔ぢゃ
なければ、俺ら3人も是非。」
言葉を被せた。
「はっ?」
驚く斐川を他所に弁護士は
啓太を迎えに来させるから
それまで、ここに居るよう言って
楽器の撤収に走っていった。
「あの弁護士…いい筋肉の付き方
してるな。」
走り去る後ろ姿を見つめながら
斐川が呟く。
「バカ、そうじゃねぇだろ
俺達が、打ち上げまで参加して
どうするんだよ?!
お前、今度は何企んでんだよ…」
神島がホトホト疲れたという
表情で、小言をいう。
「企んでなんかないよ。
面白そうやん」
…企みはしてないけど