壁面の時計に目をやり
一瞬考えたアイドル男は
“残念。時間ねぇや。”なんて
独り言をこぼして

「レン、鷹尾君も待ってるし、
行くぞ。」

結局、何もなかったかの様に
レンちゃんを促すにとどまった。

「じゃあ、あと一枚だけね。
啓太も入れてあげてね。」

オネイサンが、そういって
再びシャッターを押した。

…あっ…これ…


試合前に似た空気感を
俺の前に立ったチビッコから
感じる。

…俺の肩口にようやく
頭のテッペンが届く程度の
チビスケやけど(笑)

ライヴは、コイツにとっては
楽しさ半分、戦半分て所
なんやろな。

自分の試合相手ぢゃない奴を、
邪魔するんは、ポリシーに反する。


「じゃあ、俺らもソロソロ
行きます。」


本番前に気持ちを作りたいんは
スポーツも音楽も基本同じやろし
そろそろ暇するのが、筋やろう。


…ただ、その前に…


神島と斐川が、係長と一言二言
交わして扉を潜る。


“ずいぶん、低い開口だな”

“気を付けていないと
ぶつかるんだよ”

…なんて、油断こいてる
ガキ共に一発お見舞いやな。