黙ってそれを見ている人が
いたことに。

自分を助けようとしてくれて
いたことに。

嬉し涙を流す上司が可愛くて
完全に参ってしまう。


「こっち、死角やから。」

涙の止まないレンちゃんを
目立たない場所に
連れ込んだのは

「レンちゃん。俺も、アイツらも
レンちゃんの役に立ちたいと
思てるよ。」

頬に光る涙の跡を
指でなぞる。

「もっと、わがままに
使ってくれてもいいん違う?」

差し出がましいけど
そんな風に日頃からの
想いを告げれば

「部下にこんなこと言わせて
不甲斐ない上司で…」

こちらを真っ直ぐに見遣る
瞳の意志の強さに釘付けになる。

続くはずであったであろう
“ごめんなさい”は、
必要ないから


唇からこぼれない様に
自分の唇で塞いだ。