【完】もう一度、音を愛す。








「家の両親は、私があの二人に
 ピアノを習う事を快く思っていなかった。

 以前通っていたところは
 そこの旦那さんが会社の社長だった。

 そこはゆくゆく私とそこの息子が
 婚約する予定で、私を利用して
 会社を大きくしようとしていたの。

 私を元のピアノ教室に戻すため
 熱烈な二人のファンであった
 信治さんを送り込んだ。

 あの男なら何とかして私を
 止めさせられる、とね。

 結果、あの人は先生たちを
 殺してしまった。

 そこまですると思ってなかった
 両親のとった行動は、
 自分達との繋がりを消すことだった。

 メディアに嗅ぎ付けられて
 会社は倒産して、
 今は細々と暮らしてるけど。」




当時、響子さんの両親には会ったことがなかった。

大きい会社を経営していた、って
聞いた記憶はある。


そういった響子さんの目は、暗く淀んでいた。