【完】もう一度、音を愛す。








一回、お母さんに
言ったことがあった。



「信治おじちゃんは、お母さんのこと
 好きなのかなぁ?」


「信治君はね、ママのピアノが
 好きでいてくれるの。

 きっとその気持ちが、自分でも
 分かっていないだけなのよ。」



「よくわかんないや。

 けど私は、あんまり好きじゃないな。

 おじちゃんも、おじちゃんのピアノも。」



そういったら、お母さんはこう言った。



「きっと信治君も分かる日が来る。

 その時には愛音も好きになれるわよ。」