もうその時には遅く、真っ赤な帽子をかぶった鬼がオレの近くまで来ていた。
後、大股十歩もすれば届く距離。
帽子を深めにかぶっているせいで誰なのかわからない。
オレは身に迫る危機感と恐怖を感じて目を閉じた。
「………あ………。」
声がした?
一瞬で状況が最悪へと変ってしまった。
声と同時に何かがぶつかるような鈍い音とブチャと潰れる音が聞こえて、慌てて目を開けた。
そこには見たくなかった光景が広がっていた。
これこそ地獄絵図だ。
「うっ……お前ら…。」
思わず咽せかえってしまうほどの残酷さだった。
赤くなった地面。
倒れている二人の人間。
頭から脳みそが出ていて、手足は有り得ない方向に曲がっている。
それでも一人はわかる。
「あ……、ありさ…?」
川辺あかりが呟いた通り、名前は川辺ありさ。
川辺あかりの双子の姉だ。
川辺あかりは二人が倒れている所から近くはないのに、誰なのか理解した。
ヨロヨロと二人の所へ近寄って行く。
それが川辺ありさであることを改めて確認すると、小刻みに震え始めた。
「イャァァァアアア!!ありさぁぁぁあ!!」
つんざく悲鳴に近い声をあげて川辺あかりは泣き出し、地面に崩れるように座り込んだ。
状況からすると近くの誰も使わないビルの屋上から川辺ありさが飛び降りて、下にいた鬼とぶつかった。
多分それだろう。
それにしても残酷過ぎる…。
なんで最悪な奇跡なんかが起こるんだよ。
二人が同時に死ぬなんて。



