「何止まってるの!?鬼になるわよ!!」
川辺あかりは相変わらずオレをキッと睨みつけながら喋っている。
「あぁ、少しボーとしてた。急ぐぞ!」
「言われなくても急ぐわよ!」
鬼が誰なのかはわからないが、同じクラスメイトということは間違いない。
自分が助かるかわりに、他の人が犠牲となる。
人間の本性が露わとなるゲーム。
色々なヤツらが本性を出した。
そしてオレ自身も…。
鬼になりたくない、まだ死にたくないという気持ちがオレの本心だ。
きっとオレの本性は偽善者の弱い人間だな。
やっぱり支配者よりツラいな、参加者っていうのは。
川辺あかりが気づいたおかげで、余計な事を少しだけ考えるほどの心の余裕が出来た。
その時オレは何故川辺あかりが携帯電話を持っていたのか、衝撃を受けた理由を忘れてしまっていた。
いや、現実逃避をしたかったのかもしれない。
時間は止まることなく、時には一瞬にして最悪な状況になるものだ。
そしてそんな最悪な状況が今から起きるということを、忘れてしまったオレには考えることすらなかった。



