嘘だろ!?
こんな時に鬼と出会ってしまうなんて!!
それでも川辺あかりは、まだ携帯電話を眺めたままだ。
急がなければ鬼に‥!
「くそっ!踏ん張れよ!」
捻挫している足の太ももを叩きながら、オレは川辺あかりの方向へ走りだした。
激痛で頭が真っ白になってしまいそうだが、走ることを止めなかった。
オレと鬼、二人が川辺あかりのもとへ走っている。
どちらが先に着くのか五分五分だ。
「気づけ!川辺ぇぇぇ!!!!!」
つんざくような叫び声をあげるオレ。
お願いだ、気づいてくれ。
「…清…川?」
オレの声に川辺あかりは気づいたらしく、ハッとした表情であたりを見渡す。
どうやらすぐに状況を把握したようだ。
川辺あかりは携帯電話を握りしめたまま、全力疾走でオレの方へと走る。
すげーな。
オレは率直に思った。
川辺あかりの足が速いから驚いているわけじゃない。
さっきまで自分の家族が罰を受けると絶望して外からの声が聞こえていなかった川辺あかりが、一瞬にして状況を把握しそれを行動にしている。
その判断能力とその場の状況を把握するスピードに正直驚かされた。



