人間ゲーム



なんとか渡総馬から見つからずに逃げ切れたようだ。


気づかないうちに、使われなくなったビルが並ぶ通りへ来てしまった。


やはり、いつもと変わらず今日も人数が少ない。


そこで不自然に存在する少年少女。


息は荒れ、髪の毛はボサボサ。


逆にそれがその場に馴染んでいるのかもしれない。


「はぁ、変な所に来てしまった。最悪…。」


オレの隣で川辺あかりがブツブツと呟く。


それが正直、耳障りでしかたがなかった。


「そんなに文句を言うなよ。オレだって言いたいのに…。」


「はぁ?じゃあ言えばいいじゃない!このゲームが怖いです~。助けて~って!」


普通に喋っていたらいいのに、オレのマネをしてきたことにイラッときた。


「そんな事言うわけねーだろ。川辺怒りすぎだぞ。」


オレは普段より低い声を出し、オレが怒っていることをアピールする。


それにピクリと反応する川辺あかり。


そしてオレは気づいた。


なぜオレがイライラしているかや、川辺あかりが怒っている理由を…。


それは怖いからだ。


見えない恐怖が生徒の前に現れ、何人もの犠牲者が出た。


そのことにお互い恐怖を抱き、それを紛らわそうと人にあたる。


そうしないと自分が壊れてしまいそうだから…。


それに気づいた時にはもう遅く、オレの腕が川辺あかりの肩から離れた。


いや、川辺あかりから押されたといった方があっている。


思わずオレは地面に尻餅をついた。