「川辺!靴を持って奥へ進め!あいつが来た!」
川辺は言われるままに靴を持ち、奥のリビングへと走った。
オレもその後について行く。
「川辺、何であいつ追いかけてんだ?」
オレが言うと、川辺あかりは呆れたような顔をしてオレを見た。
「それは当たり前でしょ?総馬は鬼だから、早く変わりたいんでしょーね。」
「そうだな、早く変わりたいもんな…。」
確かに渡総馬は鬼だ。だが、人間とは思えないほどの速さで…化け物のようだった。
「そうよ、総馬もクソよね。女子を追いかけるなんて本当に最低な男。」
渡総馬がいるであろう玄関の外に向けて冷たい視線をおくった。
「まぁ、誰だってそんなもんだろ。生きるために仲間も関係なく生け贄にする。」
「何か、知ってるような口ぶりね。」
川辺あかりはそう言いながら自分のバッグの中から救急セットを取り出して、治療を始める。
それをオレはジッと見つめる。
「何よ、ジロジロ見て。気持ちが悪い。」
「いや、別に…。川辺にも女子らしい所があるんだな~っと思って。」
オレが少し冗談まじりに言うと、川辺あかりは敏感に反応し、オレを睨みつける。
「わ、悪い!?清川のようなバカとは違うの!」



