「いや、違う。オレは夢を見た。それもゲームのな…。」


オレが主催者だったことと、三浦百子の存在はあえて言わずに、夢と現実の同じ点を全て言った。


話し終えた時には翔の笑顔が消えていた。


「マジかよ……。じゃ~、お前はゲームを未然に防ぐために来たのか?」


自分の顔から笑顔が消えていると気づいたのか、翔はハッとしていつもの顔に戻った。


その様子をオレはジッと見つめる。


「あぁ、そのつもりだった。だが実際は誰も助けることが出来ずに無力なことを再認識するだけだった。」


そう言いながら、自然と拳に力が入る。


ふと手を見たら、手の平にくっきりと爪のあとが残っていた。


それでどれだけオレが思いつめているのかわかる。


本当、なんのためにオレ転校したんだろ…。


翔がどう言ってくるのか、期待の反面不安だった。


すると翔の口から出た言葉はあまりにも、思ってもみない言葉だった。


「へぇ~、だから?」


「え?いや、だからって…。」


動揺しすぎて思わず、言葉が出なくなった。


「そんなの、無力と関係ないだろ?そんな事言ってたらこっちはどれだけ無力なことか~。」


「だけどな…。」


「だけどもクソもねぇーよ。気持ちはわかるけど、いくら考えても死者は戻ってこないぞ?」


翔ヘラヘラとした口調で言っていたが、目が不自然なくらい力がなかった。


何かに失望したような、底のない影を抱えているような普通の人間にない表情……。


「そうだな…。変な話して悪かったな。」


「あははっ、別に良いって!」


それからその日は、もうゲームの話題はしなかった。