「夏休みだからな、二階の俺の部屋にいる。それがどうかしたか?」
「よく聞いてくれ!今からオレはお前の家へ行く!だからどこに家があるのか教えてくれ!」
生徒全員の住所は大まかには覚えているが、詳しくは知らない。
オレがそう言うと鳥沢海は黙りこんだ。
何か考えているのだろうか?
そして少しの沈黙の後、携帯電話ごしから長いため息が聞こえてきた。
「清川、お前あのゲーム本気にしているのか~?」
冗談かのように話していたが、声は真剣そのものだった。
「あぁ、オレは本気だ!だから早く教えてくれくれ。」
「‥‥あぁそ、学校の近くに大きめな黄色い家があったろ?それが俺んちだ。」
あの目立っていたあの家か!!!
「了解!電話切るなよ。」
そう言いながらオレは全力疾走する。
オレよく走るな‥‥。
そんな体力あったっけ??
心の中ではのん気にそんなことを思っていた。
「なぁ、おい。」
急に鳥沢海から話しかけられて驚いた。
「どうした?」
「俺死ぬのかよ‥。」
「大丈夫だ!!きっとな!!」
そう言うしかなかった。
お!あと一キロしたらアイツの家だ。
「そうだな‥、ガラガラ‥もし来たら俺が逆に殺してやるか。」
「殺すのは止めろよ、殺人に‥‥え?」
「あ?どうかしたか??」
今‥‥、
何か声ではない音が聞こえなかったか?
「おい、今ドア開けたか?」
オレの声が震えていることがわかる。
「ドア?どこも開けてねぇよ。」
真面目そうに鳥沢海は応えた。
だったら今さっきのは何だ?
「‥‥なら、窓は?」
「あ?窓??そんなもの‥‥‥うっ!」
想像もしたくないものが無理やり頭の中で映像化された。
そんなバカな‥。
いくら呼びかけても返事がない。
何かゴトゴトと引きずるような音が聞こえてくる。
そしてすぐに何も聞こえなくなった。
後少しで鳥沢海の家だっていうのに!!
とにかく家へ向かうしかない。



