「何を言ってるの!?そんなの無理に決まっているでしょ!!」


普段怒らない母さんが、顔を赤くして怒鳴っている。


久しぶりに聞いたな‥。


「母さんの言うとおりだよ、そんなの無理に決まってる!」


広人もオレの転校を否定する。


そう言われて当然だ。


自分でも何でそんなことをしているのか、本当にバカげたことだと思う。


だが、考える前に行動をしろ!という感情がオレを動かしていた。


多分、夢の中の癖なのだろう。


そんな怒りと疑問と不安の表情の二人だが、父さんだけは違い、冷静だった。


「何故、転校したいんだ?イジメか?」


この時、父さんがいて本当に良かったと改めて思った。


「いや違う。だけどオレにはあの学校で確かめなければならないことがあるんだ!‥‥‥詳しくは話せない。」


オレの真剣さが伝わったのか、それともオレに呆れたのかわからなかったが、父さんは深いため息をついた。


そして数秒だけオレたちは目を見つめ合い、父さんがようやく口を開いた。


「好きにすればいいさ。」


少し冷たいようにも感じたが、そこにはちゃんと愛情があることが理解できる。


「ちょっと、本気なの!?」


「あぁ、人生は一つっきりだ。だから悔いが残る真似はしてほしくない。」


「‥‥そうね、時間はかかるけど新しい学校でも頑張りなさいよ。」


もう怒った母さんはいなく、いつものように微笑んでいた。


「本当にありがとう‥‥‥ございます。」


必死に目に滲む涙を堪えながら、家族に頭を下げる。


オレ夢の中とは違うけど、孤独だな。


確かに今のオレは家族にも、学校にも恵まれている。


だがあの夢を見て、たかが夢なのに何故か独り得体の知れないものに怯え続けている。


そういう意味でオレは孤独なのだ。


一人ではないのに独りってなんか矛盾してるな、オレ。


‥さて、独りっきりの作戦開始だ!!!