それからお互い無言のまま家へ帰った。
広人は何かを言いたげに何度かオレを見ていたが、きっとオレが話せないオーラを出していたのだろう。
その場の空気を考えて、何も言ってはこなかった。
そしてリビングでは、晩飯の用意をする母さんとテレビでスポーツ観戦する父さんがいた。
「あら?修也どこかへ出掛けるとは思っていたけど、広人と一緒だったの?」
いち早くオレたちに気がついた母さんが、話しかけてくる。
「実は兄ちゃんが俺の学校に来たんだよ!本当ビックリしちゃったよ!!」
少し興奮気味に話す広人を見ながら、母さんは目を丸くして驚いていた。
それもそうか‥‥。
まさか広人のいる学校へ行ったとは思うはずもないよな。
「そうなの?修也。」
「広人の所属しているバスケ部がどんなものか興味があったし‥それに‥。」
「それに?」
一瞬言おうか戸惑ったが、覚悟を決めてあの言葉を口にした。
「オレ、広人がいる学校へ転校したいんだ‥。」
前を見ると、その場の時間がとまったかのように、全てが一時停止して見えた。



