となり

樹も私に気付いたような気がした。


だけどそのあとどうなるのかは、わかってる。


だから辛かった。


隣にいる片岡さんは小声で


「南波先輩だよ？」


と言ってきた。


「…うん」


樹は私たちのいる方向に歩いてきた。


どんどん距離が近づいて、とうとう目の前まで来て…。




そのまま通り過ぎて行った。



…もう慣れたから、わかってたもん……。


「声かければよかったのに～…」


何も知らない片岡さんはそう言っていた。



…いつまで、私はこんなことを続けているんだろう。


いつも私はこうやってただ、スルーされて傷ついて。