となり

その日の放課後。


片岡さんが「みんなで買い物に行かない?」と誘ってくれたので数人のクラスメイトといろんなお店を回った。


その間は樹のことを考えずに済んで楽しむことができた。


そしてそのあと、みんなと別れた後に家に帰って玄関に入ると、ふわんといい香りがした。


「おかえりなさい」


「ただいま~」


お母さんはいつものように「おかえり」と言ってくれたけど、いつもの場所にいなかった。


「今日は帰りが遅かったわね、どこかに行ってたの?」


と、台所から言った。


「うん、友達と買い物に行ってた」


友達と言うのが少しくすぐったかった。


だけど、それより…。


「お母さん、ゆっくりしてなきゃダメじゃん」


お母さんは台所で料理をしていたのだ。さっき香ってきたのはその匂いだったんだ。


「もうあれから大分経つのよ?これくらい大丈夫よ。というか、そこまで心配しなくて大丈夫だから」


確かに私は必要以上に心配をしているのかもしれない。


だけど仕方ないじゃん。あんな風に目の前で倒れられたんだから…。