となり

樹は、親に愛されて生きてきたんだね。


だからだよ…そんなこと言うのは……。


「そうでもないよ。ホントに私はどうでもいいの。だって、私も嫌いだから」


振り返って樹を見ながら言った。


樹は相変わらず怪訝そうな顔つきのまま。


「……俺は、愛華の母親じゃないけど…。愛華のお母さんは愛華のこと、ホントは嫌いじゃないと思うよ。それは愛華だって同じだと思う」


何を言うの？


「一緒にいることが少なくても、なにがあっても…ホントの親子がお互いのことを心底嫌いになることは、ありえないんじゃないか？」


ありえるんだよ。


私は、きっと母親が私を嫌ってる以上に母親を嫌ってる。


「樹には、わからないんだよ。早く片付けようよ」


そう言って私はその話を終わらせた。