私は突然樹にあんぱんのことを聞かれて、平然を装ったものの、一瞬焦った。


樹のおすすめで、初めておごってもらった思い出のパンだから、なんてホントのことを言うわけにはいかないからね。


「いっつも言ってるけど、もっと食えよ?細すぎなんだよ、こんだけしか食わねえから…」


「はいはい」


いつもはこれだけかもだけど、イヤなことあったらやけ食いするからね。プラマイゼロになるはず。


「…絶対食わねえだろ。ほら、これも食え!」


と、言って樹が差し出してきたのは3つほど袋に入ったクロワッサン。


「………」


グイグイ押し付けてくるもんだから仕方なく1つ取った。