「ずっとずっと、君に会いたかった」
そう言って彼は私の制止も聞かずに、安全な傘の中から出る。
サラサラ降り注ぐ雨の中で私を振り返るその線の細い顔も、体も、服も、ちゃんと雨に当たっているはずなのに、濡れているようには見えない。
────ッ!
泣き笑いのような顔と向かったその時に背中に走った。
面影。
誰?
いつ?
どこで?
学校?
違う。
じゃあ・・・……?
「思い出せないのも無理はないよ。僕らが会ったことがあるのは、だいぶ昔のこと。それもたった一回の数分間だけ」
「それ…だけ…?」
そんなものだったの?
私に走った電流と、この雨で寒いのに噴き出した脂汗からすれば、とても重大な理由だと思ったのに。
あれー? と首を捻る私を見てサク君はクスリと笑って、私の横を手で示した。
「今は空き地になっちゃったあそこに、前は結構大きな病院があったの憶えてる?」