師匠はお琴ねえさんが大好きだから。

お琴ねえさんの好きな花を描いて『これで姐さんとずうっと一緒や』そう愛しく扇子を手にする師匠は、一体なんどそのセリフを吐いたのか。


なんにせよ、ただの扇子と侮るなかれ。

刀以上に切れ味抜群なのだから。



「お、お琴ねえさんの悪口なんか言わないよおう。おっかねえ」


「……ま、姐さんの魅力をぜえーんぶ知り尽くしてええんは僕だけやけど。

はあ、なんで姐さんはあんな優しいんや。おかげで害虫群がって毎度毎度たいへんやわあ。……ま、駆除すりゃええだけの話やけど」


「………。」



この人ならいつかお琴ねえさんのために悪魔にでも心臓を差し出しそうだ。


…いや、“もう既に差し出していたか”。