口に含めば、ふわりと広がる。
師匠特製の甘酒はなにか特殊な材料を混ぜているようで、ひどく甘ったるい。
だけどそれが、今のおいらにはひどく美味しく感じる。
「………うめえ」
「ははっ、せやろ?僕も姐さんに教わったんや。最初はむせる程に甘ったるかってんけどな。
今はもう、この味が好きなんや。落ち着きたいときとかなあ」
「ほぇえ、お琴ねえさんに教わったんだ。どうりで甘ったる……」
「姐さんの悪口(あっこう)叩かせまへんで」
つっー…と首に添えられた扇子。
師匠の愛用しているこの扇子は、相変わらず派手だ。
朱色を地にして金箔が少量。【さんざし】の花が描かれているのはきっと、お琴ねえさんを想ってだろう。


