暫くすると彼女は動いた。
ゆっくり僕たちのいる方とは反対の方へと進む。
その動きさえも魅力的で、優雅で、そして…可憐だった…
ふと、彼女がこちらを向いた。
「ほな、さいなら…お侍はん…」
彼女はそう言って華が咲くように笑った。
ザァァァァァァ……
するとどこからかいきなり風が吹き思わず目を瞑ってしまった。
目をすぐに開けたがそこにはもう彼女はいなかった。
残ったのはすでに息絶えた人であったモノと…
風が吹いた時に一瞬
微かに香った金木犀の匂いだった…
僕は何故だか、再び会える気がしてならなかった。


