町人たちが寝静まった夜深き頃…
僕は巡査をしていた。
先ほどまで見えていた月はどうしたものか、雲に隠れてしまった。
はぁ…
思わず溜息が出た。
すると、微かな鉄の鼻に残る嫌な臭いともに掠れた男の呻き声が聞こえた。
僕は隊士たちに刀を抜くように指示をする。
隊士は頷きそっと鞘から刀を抜いた。
ピンとした緊張感を漂わせながらゆっくりと臭いと声のする方へと向かう。
通りの真ん中に一つの暗い影が映った。
僕らはそれをじっと見る。
雲に隠れていた月が現れ見えたものに
思わず瞬きをするのも忘れていた…
黒く綺麗な長い髪は束ねておらず、
少し着崩し露出した白い肌を引き立たせる
黒い蝶の描かれた着物に深く綺麗な紅い帯…
そしてその深く紅い帯よりも深く
見た者を吸い込みそうな不思議な
紅い目…