少年の頬と通り顎を通過した後に流れた液体は重力に逆らう事なく床に落下していく。


どれ位の涙や鼻汁、そして汗を流しているのだろう。


流れ落ちた先のリノリウム素材の床と座っているビニールレザー製のベンチを濡らし、

吸水しきれないものは行き場所を失いその場で留まっている。

5分、10分程度で出来る様な量ではなく、

想像出来る事と言えばこんな時間1人で病院に居る少年の身近な人に何かがあったのかもしれない。


誰にも気づかれることなく遠くからおそらくこの病院に搬送されるであろう救急車のサイレンが彼の存在を消していった。