緊張を紛らわすように目を泳がせていると、 体育館入口に走ってきたばかりの人に目が止まった。 ───その瞬間は、いつか学食で王子様を見つけた時と同じで。 『先輩……』 マイクを通した私の声が体育館に響く。 名前を言ってないから、体育館はざわざわするばかりで。 でも、佐倉先輩は目を見開いて私を見ていた。 なんだ……先輩来ちゃったんだ。 今さら逃げれない。 ───逃げるなら、せめて。 『佐倉先輩が……好きです』