これが腕を掴むとかだったら……たぶん振り払えた。


こんな優しく手を握られたら拒否なんて出来ないんだ。



「……なにか急用ですか?」


動物園を出てから、先輩を見上げて聞いてみる。



「………あぁ、すっげぇ大事なこと」


少しの間のあと、先輩はそっぽを向いてそう言った。


先輩の耳たぶがほんの少しだけ赤く染まっていたから、

私は何も言えなかった。



いったいどうしたんだろ……?