「ほら、早く呼べよ」


その意地悪そうな笑みに、なぜか私は適わない気がした。



「きょ……恭汰!」


開き直って先輩の名前を叫ぶと、散歩中だった犬がワンと吠えた。


い、言えたぁ~!

言えたよ、私!!



「よし、呼べたな」


背を屈めて私の顔を見つめながら頭を撫でてきた先輩。


犬の飼い主のおじさんが咳払いをしたけど、そんなの私の耳には入ってこなかった。



だって……気のせいかもしれないけど、先輩が嬉しそうに笑ってたから。