「胡桃は俺のこと嫌いでも」 言葉を切り、妖艶に口角を上げた佐倉先輩。 近い距離は保たれたままで、私の胸はドキドキするばかり。 「俺はお前のこと、気に入ってんだけどな」 ………え? 気に入ってる? そんなの、曖昧な線引きだ。 それに都合のいい、言葉。 でも、私はそんな言葉に、先輩の甘い表情に。 どうしようもなく胸が疼いた。 「そんなの……ウソですよ…」 絞りだしたようなその声は、自分でもびっくりするくらいか細かった。