9時30分。
それは、試合開始直前のこと。
「おぉー!」
急に上がるサッカー部員たちの歓声。
興奮している男の子たちの目線の先は、
私の後ろ。
「きーいちゃーーーん!!!」
後輩の男の子が大きな声で叫ぶ。
「こうーきーーーー」
今度は私たちと同級生の男の子が、こうちゃんに向かって大きな声で、後輩の子に負けじと叫ぶ。
嫌な予感がした。
こうちゃんがこっちのテントに向かって走ってくる。
あっという間にテントにたどり着いたこうちゃんは、私の後ろに向かって声をかける。
「希衣」
後ろに振り向くと、やっぱり………。
予想通りの人。そこには、白のふんわりとした半袖シャツに、薄ピンクのフリルのスカートを可愛く着こなした女の子がいた。
それは紛れもなく、こうちゃんの彼女で。



