俺と七海はお互い恥ずかしさを残しながら水族館を後にした。


桃子と愛希も途中で合流し、
沈黙は無くなった。




「そう、樹さん記憶が・・・」


「結構戻ったよ」


「おめでとういっちゃん!」


「ありがとな愛希」


愛希の頭を撫でる俺。

だけど肝心な愛希の記憶だけ思い出せない。
七星の記憶も思い出した。
両親の事も。

なのにどうしても
愛希達一家の記憶を取り戻す事はできない。




「とりあえず、愛希さんが言っていた大きな建物?ビルかしら。そこを探せば樹さんの記憶も辛いけれど戻ってくるかもしれないわ」


「そうだな」


「樹君と愛希ちゃんの為にも!いっちょさがそっか!」




七海も
少しだけ空元気ながら
そう言ってくれた。


俺は少し微笑んで「おう」とだけ言っておいた。



本当は
俺も成仏なんてしたくないから。


こうやってふわふわした幸せの中に漂っていたい。

それだけの理由。