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『すごく大事だよ』


俺はこの言葉を今さっき七海に送った。

七海は放心状態。
俺の気持ちが伝わっているのかは分からない。



無性に落ち着かなくなった俺は
水槽をすり抜け、七海とはガラス越しとなった。

同じ空間にいると言う事が
少しだけ恥ずかしくなったから。




「樹君」


「・・・」


「手、前に出して?」


「前に?」


「うん」



俺は七海と目を合わせられないまま、軽く手を前に出す。
ちょうどガラスに手が当たるまでの位置。


「ありがとう」


七海はそう言うと、
自分の手をガラス越しの俺の手に当てた。



「樹君に触れられたら良かったのに」


「七海・・・」


「こうやってガラス越しじゃなくて、ちゃんと体温感じられたら良かったのに」


「ごめんな」


「私にとっても樹君はすっごく大切な人」




俺と七海。
お互いがお互い同じ想いじゃないかもしれない。


だけどはっきりと口には出さない。
出したところで叶うわけじゃないから。