「───つき!・・・樹!!」



誰かに呼ばれてる気がする。



「樹・・・樹!!」



目を開ける事ができない。



「お願い・・・。神様・・・」



悲しい声の、男の人と女の人。

この人達は誰だろう。



「・・・っ!」


目を覚ますと、そこはどこかの公園だった。
周りは真っ暗。
人気もないようだ。



「ここは、どこだ」


長い夢を見ていた気がする。
だけどそれが何なのか思い出せない。


思い出そうとすると頭が痛くなる。


「・・・とりあえず、歩いてみるか」


公園を出てみると、すぐに街中に出た。

どうやらここら辺一帯は都会らしい。




「俺はこんなところまでどうやって来たんだ?」

素朴な疑問を思い浮かべながら真っ直ぐ伸びた道を歩く。




そして、もう一つ疑問が生まれた。



「そもそも俺はどこにいたんだ」


自分がどこの誰なのか、
どこに住んでいたのか、
何歳なのか、
両親は誰なのか、
何も思い出せない。



「樹・・・木戸、樹」


唯一思い出せたのは自分の名前だけだった。