甘いアイツのお気に入り





あの頃の俺達は、支え合うしかなかったんだんだよ茉莉。


ただ俺達だけが不幸なんだって。
周りが見えていなかっただけ。


幸せはたくさん転がっていたのに
見る心を持ち合わせていなかったんだ。




「茉莉」



優しく腕をほどくと、濡れた瞳が俺を見た。




「俺じゃなくて、茉莉を思ってくれてるやつがいるだろ?」




「え……?」





「いつも、茉莉の近くに……」



寄り添ってくれている人が。



それだけ言うと、
茉莉の瞳から大粒の涙がこぼれた。