次に意識が浮上したのは、さっきのライブで、私が夢中になって指先をみつめたギタリストに、じゃあ行こうか、と、抱え起こされた時だった。



ああ、やっぱり指長い。
きれいだなぁ。


打ち上げ会場の居酒屋から、いざなわれるままに、ホテルへ入る。



…ホテル?

私は、行く、と言ったっけ?

手を引かれて、おとなしく歩いていたのだから、また承諾しちゃったのかも知れない。




「どの部屋がいい?」


ああ、あんなに素敵にギターを弾いていたのに。

あんなにカッコ良かったのに。



ただの…
男に、なってしまうんだ?



私は、一番黒の多い部屋を、指差した。

せめて、このギタリストの長くて綺麗な指先が目に入らないと、いい。


甘く、優しく、してくれると、いい。