「…哲、心配した?」
「………すごくした」
やだ怖い。
すごい素直。
訊いたのは私なのに、思わず視線を泳がせる。
「…も……吐くかと思った…」
「……………」
哲…それ、私みたいだよ…。
音は。
真ちゃんが勝手に冷蔵庫を開けて、缶を開けた、音。
硬そうな音だから、きっとビールのアルミ缶ではなく、コーヒーのスチール缶。
心配した、と。
真ちゃんがいることなんか、見えていないかのように繰り返した、哲の、声。
そういえば私。
哲は、私を心配してる、って思い込んでた。
いつも、いつでも。
遅くなれば心配する。
だから帰る。
元気のない様子を見せれば、心配かける。
だから笑う。
哲は心配した、なんて言ったことはないのに。
どうしてかそう、いつも思っていたっけ。

