不意に、車の音がして。
哲は、ぎゅっと眉を寄せたまま、くるりと後ろを向いた。
「………蜜、真也来た」
顔、洗っときなよ、と言い残し、そのままドアを出て行った哲を、追うなんて。
出来なかった。
何にも、しなかったのに、無くなった。
私、哲と寝てないのに。
寝たけど、寝てないのに。
つけっぱなしのテレビからは、まだシンディローパーの明るい声が歌っていて。
叫びたいような、物を投げつけたいような。
このまま、毛布にキツくくるまって、深い穴底に埋まりたいような。
両極端な思考はまとまらずに、私はしばらくそのまま、哲の出て行った辺りを、見つめていた。
真ちゃんの声がして。
哲の部屋のドアが開いた音。
それきり、隣からは、なんにも聞こえなく、なった。

