「…蜜」
私が必死になって、まとわりつくような思考を振り払おうと、地味にジタバタしているうちに。
しびれを切らしたように、再度呼ばれた。
「終わった?」
「…うん。焼きたて、…食べる?」
「ひとつ」
あ、全部って言わない。
だよね、全部なんて、要るわけ……
「あとで、頑張って全部食う」
「………ぃや………なんでよ」
あまりに頑なに言い張る哲が、ふてくされたように、そっぽを向いたけど、唇のピアスが。
自分でも可笑しかったのだろう、見慣れた苦笑を浮かべたことに私は、ひどく安心した。
「…お茶、は?」
「なんか合いそうなやつ」
あ、ちょっと、楽しくなってきたかも…知れない。
ここんとこ、なんだかずっと緊張していたから、疲れた気もするし。
アップルパイに合うお茶を。
夏に、実家で育てて貰ったカモミール。
雑草扱いのスイートミント。

