「蜜」
「………っ」
びく、と。
肩が震えてしまって。
焼き上がった最後のパイを、テーブルに取り落とした。
自分でも、なんでこんなにビクビクしてるんだろう、と、可笑しくなる。
ちょっと、ちゃんとしなきゃ。
哲は私にとって“哲”で。
それ以外に、なりはしない。
これから毎日、一緒に働いて。
例え哲が、……うん、誰かと結婚でもして、隣から居なくなっても。
私の“哲”は“哲”のまま。
大丈夫。
無くならない。
私が、口に出しさえしなければ、無くならない。
それは、自己暗示。
本当はちょっと解ってる、なんて…認めたら、怖いから。
多分、哲も私を好きだなん………て……
………いやいや!!
ない!
無いから!!!!
何を馬鹿なことを!!!
私は…私は!
いつから……そんな目で哲を見ていた!?
哲は…“哲”だもん!!

