あっさりと煮含めた紅玉を一切れ、パイ生地で包んで並べる。
楽団は人数が多いから、小さく小さく、一口大に作る。
パイは、焼く時間が短いから、段取りさえつけば、焼き上げるのは簡単だ。
一応、哲の分、って。
お椀くらいの…みんなより大きな直径で、用意はしてあった。
だけど。
…………全部、なんだよね?
全部、哲のなんだよね?
焼き上がったパイが、含んだバターを弾けさせる、小さな音。
テーブルいっぱいに広げて、あら熱を取るときの、音。
哲は、以前ならいつものように。
ここ2日なら、久しぶりに。
私のベッドに寄りかかって、テレビを、つけた。
録画リストから、80年代ブリティッシュロック特集を選んだのか、ローリングストーンズの、誤魔化しのない単純な音が、バターの弾ける音を、呑み込んだ。

