団長は、ちょっと失礼、と足を崩すと、テーブルに両肘をついた。
「蜜サン」
「…はい」
団長の茶色い髭は、鼻の下と、顎の下。
髭フェチの私にとって、平日の癒やしは婿様で、土曜日の癒やしは団長だ。
「僕が常にそばにいますから、今日の練習、出て来ませんか」
頬肘をついて、小首を傾げんばかりの団長の、なんだか口説いているような言い回しにちょっと可笑しくなって。
私も僅かに、首を傾げた。
「…今日……?」
「ずっと、そばにいますから」
………
……………わざと?
……わざとなの!?
「さっ…妻子持ちの髭のくせに…なんつー殺し文句を…!!」
「…髭は関係ないでしょう!」
でも。
…そう、か、と。
なんとなく。
私がこのまま、なし崩しに辞めてしまえば、遼の傷も、私の傷も、痕を残すんだ。
なかった事になんか、ならないんだ。
団長が、辞めたがる仲間の家にこんな風に来て引き止めた、なんて。
聞いたこと、ないもの。

