そしてその土曜日。
団長が、来た。
雪音ちゃんと一緒に。
私の携帯から、全てのアドレスが消えてから、早一週間。
哲と、真ちゃんと、職場のひとのアドレスは再登録、した。
数字だけの電話が幾度かあったけれど、もし遼だったら、と思うと、出られなくて。
遼は決して、無理強いしたわけではない。
私が許して、私が拒絶しただけだ。
………悪いこと、しちゃったよね…。
「倉橋蜜」
「はっ…はい」
あわわわわ。
団長、ちょっと怒ってる。
団長が私をフルネームで呼ぶときは、音が乱れたとか、楽器の手入れが疎かだったりしたのがバレた時だけだ。
「…心配したじゃないですか」
「……………」
……あれ?
団長優しい。
「辞めたいって言うから、練習の日に話を聞こうと思ったら、来ないですしね?電話すれば繋がらないですしね?木下さんも、蜜サンと電話が繋がらないって心配してるしね?」
ああ…やっぱり怒ってるのか。
…団長が私の部屋に来るなんて、初めてだ。

