なんだか解らないけれど、マズい。
哲の口数が、少ない。
や、いつも少なめだけど…増して少ない。
私は哲の顔色を窺いながら、切れたリンゴを受け取った。
真ちゃんは帰ったんだろうか。
週末はハンバーグ、の約束は生きているだろうか。
ちゃんと哲も、一緒だよね?
「コーヒー、飲む?」
「あ…私、淹れる」
「ん」
あっさりと私のキッチンの、私の場所からどいた哲は、決して冷たい訳では無いんだけれど。
週末の約束に、哲がいなかったらどうしよう、なんて。
今までにも無かったし、考えたことも無かった事を思ってしまったほどに。
哲の唇のピアスは、笑みを浮かべなかった。
もしかして。
もしかして。
起き抜けに、手を。
振り払ってしまったから…?

