「…冷たくなったり…熱くなったり…」
心底うんざりしたように、哲が言うもんだから、私は、熱なんかない!って。
言い張った。
とは言うものの、金目鯛、美味しくない……のは確かで。
熱があるのも、なんとなく分かっていたし……。
「蜜~、ちょっとコレ聴いてみ?15年前に一応メジャーデビューした、ビジュアルバンド。最近復活したけど、やっぱり売れない微妙な感じ」
真ちゃんが、そんな失礼な事を言いながら、いきなり私の耳にイヤホンを押し込んだ。
遮断された、外の音の代わりに、低音から始まった、曲。
…………おお?
あ~…確かに微妙かも知れない…なんて、頭の上で聞こえるような、閉鎖された聴覚に、気を奪われた。
ベースラインのバランスが悪いのかあ、と、感覚は低音域をさぐる。
バスドラムと、ベースギターのリズム感が少しずれていて、聴いているとソワソワするような不安定感が、わずかにあった。

