朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~



哲、心配してるかな…。


体中が、体温を維持しようと小刻みに震えることを、やめていた。


自分でも解る。

きっと、これ以上は、体が保たない。


雪山で遭難したなら解るけど、ここは一応、街中で。

どこにでも逃げ込める、はず。


そもそも、こんな薄着で飛び出す事自体が、どうかしてるんだ。


私は、投げ捨てるように地面に置いた携帯に、指を伸ばした。

街灯の仄暗い明かりしか無くても、その爪までもが、透き通るように白くなっているのが、解る。



このままじゃ、死んじゃう。



私は眠っていたのかも知れない。

最後に確認した時間から、一時間以上が、経っていた。



「……死にたくは…ない、んだよねぇ………」


試しに出した声は、震えていて、体もまだ、死にたがってはいないことを、知った。


私は、冷えすぎて動かなくなった膝を、ゆっくり伸ばした。

ずっと外気に晒されていたわけではない膝の裏に、冷たい風を感じて。


自分の肌も、人肌なんだなあ、なんて。


なんだか、可笑しかった。