月は、空の高い所にあった。
着信が途切れて静かになると、興奮が醒めてくる。
これから、どうしようか。
仕事は、辞めなきゃならない。楽団も、辞める。
助けて欲しいか問われれば、そうでもない。
なんだか、このままここで、夜が明けないのが一番いい気がする。
友達の家にでも逃げ込ませて貰えば、少なくとも寒くはなかったかも知れない。
今となっては、誰一人、連絡の付けようもないし、お金もないから、電車にも乗れないんだけど。
この格好じゃ、歩けもしないしね。
歯の根が、合わなくなった。
肌の表面が、痛いような、痒いような、絞られるような。
もしかしたら。
もしかしたら。
死にたくなんかないんだけど。
そんな手もあるなぁ、なんて。
感覚の無くなった指先に息を吹きかけながらひとりで、嗚咽するほどに、泣いた。

