寒い。
つま先が、痛い。
指先も、痺れてきた。
ショートパンツに、トレーナー一枚。
こんな都会の真ん中で、凍死とか、イヤかも知れない。
鳥肌すら立たなくなった素足を、暖めるでもなくさすり、空を見上げた。
着信は続いている。
全てのアドレスを、一括消去した。
画面に映るのは、数字の羅列だけだ。
もう、誰だかも解らない。
職場の人の番号も。
楽団の仲間の番号も。
友達も、親も。
全部。
何にも、要らないんだ。
“哲”が無くなるなんて、耐えられない。
“好き”なんて嫌い。
“好き”は、壊れちゃう。
それでも鳴り続ける携帯。
私は、ゆっくりとかじかむ指先で、“登録者以外を着信拒否”と。設定した。
静かになった携帯は、ただの時計に変わり、私は小さく、膝を抱えた。

