着信音の切れた画面には、もう6回も、履歴があることが表示された。
かいた汗が、急速に冷える。
今夜は星が綺麗だけれど、修学旅行で見た星空に比べたら、半分も見えない。
街は明るいけれど、空は、暗いんだ。
そんな事を、妙に冷静に、思っていた。
吹き抜けていく冷たい風に、体温は容赦なく奪われる。
やっぱり、哲の言うように、真冬にショートパンツで眠るのはいけなかったかも知れない。
小さな着信音、大きなバイブレーション。
見つめたままの液晶に、遼の名前。
哲の名前。
遼の名前。
婿様の名前。
や、婿様は“婿様”だけど。
哲、婿様に何て言ったんだろう。
こんな夜中に何度も掛けてくるなんて。
蜜が逃げ出した、とでも喋ったんだろうか。
繰り返し、繰り返し。
代わる代わる表示される名前。
「…だって…嫌なんだもん」
途切れた隙を縫って、間違えて出てしまわないようにゆっくりと。
まず遼のアドレスを、消した。

