「拭けてない?」

「びしょびしょだ…。つーか哲…髪拭いた?」

「一応」


や、拭けてねぇ。
全然拭けてねぇよ哲。

どうして洗えたのに、拭けないんだ。


食べる手を止めない哲は、拭けていないのも、私が拭いているのも別に気にもならないのか、あとで乾かすからいいよ、と。

冬の寒さを馬鹿にしたような事を言って、不意に振り向いた。



ちょっ……何…。
びっくりするでしょうに。



「蜜」

「……なに」

「そろそろ、食え」

俺が怪我した日のケーキしか食ってないだろ。と。



…ほら。
やっぱり哲は、私のことで解らないことなんか、ない。