「今日は…どっか行くのか?」


ベランダのゴムの木に、2つに切ったリンゴを刺した。

手すりで騒いでいたヒヨドリも、いざ窓を開ければ一目散に逃げ出す辺り、一応野生動物なんだなぁと思う。

閉めた瞬間、戻ってくる辺りは、飼い慣らされてやがる、と苦笑がこぼれるほどに可愛いけど。


今日は、ムクドリも様子を窺っていた。


どうしよう。
このままじゃ私の食費がピンチかも知れない…。


哲の部屋で、ボロネーゼを食べながら、窓の外を見た。

順番待ちをしているヒヨドリの赤い頬が、なんともやんちゃそうで可愛い。




「夕方、楽団の練習」

「それは知ってる」


毎週の事じゃないか、と、哲は私が持参した丸いパンを口に運ぶ。


先週、ローズマリーの乾いた枝葉を貰ったから、細かく砕いてパン生地に混ぜたものだ。


ホワイトソースを包んで、冷凍しておいた。

今さっき、リンゴを出して、少し身支度する間の10分で焼き上がる程度の、小さな、小さなパン。